精糖工業会・森本会長インタビュー

嵐の船出に業界再編の動き

 今から約2年前、森本卓氏(DM三井製糖社長)は精糖工業会会長に就任。それは新型コロナウイルス感染症拡大の真っ只中であり、砂糖消費の大幅な減少という大変な荒波での出航となった。また、とかく悪者扱いされる砂糖の誤解を解くべく活動を通して、そのトップの森本氏に精製糖業界の現状や課題、今後の展望などを語ってもらった。

 本紙 会長就任から現在までの振り返りをお願いします。

 森本会長(以下森本)

 就任は2年前のコロナ禍だった。令和元砂糖年度の砂糖消費は1万1千㌧と、1年余りで約11万㌧も減少した。翌年(令和2砂糖年度)、回復はおろか、さらに減少するなど大変厳しい状況となった。

 一方、昨年はじめのウクライナ問題から、食品全般における大幅な原料の値上がりが広がるとともに、粗糖の国際相場も就任前に比べ大幅に高騰した。原油の高騰により輸送コストの上昇、そして円安により輸入原料の調達コストはさらに一段上がるなど、サプライチェーン全体においてコストが大幅増となっている。そこで、ユーザーの皆様には大変心苦しいところだが、製品の価格改定を実施し、昨年の12月と今年の1月で各6円値上げを行ったが、これはNY砂糖相場が20c/lbsの時の話である(現在26c/lbs)。

 需要面を見てみると、令和3砂糖年度の状況は、コロナ前とは程遠いものの、政府による行動制限緩和により、砂糖消費は174万6千㌧となった。今後、食品全体の値上げによる消費マインドの減退が懸念されるが、インバウンド需要の回復、消費の回復など経済活動の活発化を期待している。

 本紙 ウクライナ問題等を契機として、食品業界では国内原料へ、生産界は国内産への切り替えの動きが見られますが、精製糖業界においても同じことがいえますか。またどのような課題がありますか。

 森本 砂糖の場合、糖価調整制度は国内の原料糖を優先して流通させているため、国内原料の確保という点で大きく変わることはないだろう。砂糖需要が約170万㌧に対し、北海道の甜菜糖と鹿児島離島・沖縄の甘しゃ糖の生産量が70万~80万㌧で、残り100万㌧近くは輸入原糖になっている。

 一方、需要面でみると、砂糖はお菓子向け需要が最も多く、特に土産品に代表されるように、人流に大きく左右されやすい傾向があるが、令和4年の原料原産地表示制度の本格施行に伴って、輸入加糖調製品から国内砂糖に切り替える例も増えていると感じている。

 また、菓子輸出金額は令和元年で202億円から、菓子業界の皆様のご尽力とともに、農林水産省の輸出に係る支援などもあり、令和4年で280億円に拡大している。まだ金額的には小さいが、今後、中国や東南アジアを中心に、日本のお菓子の安心安全と美味しさ、品質の良さが高く評価されているものと考えており、さらなる展開に期待している。

 本紙 砂糖の消費拡大への取り組みをお教えください。

 森本 精糖工業会として2018年4月に、シュガーチャージ推進協議会を関係団体と一緒になって設立して以来、砂糖の需要拡大を推進している。シュガーチャージとは「仕事や勉強、運動や趣味など毎日のアクティブな生活の中で、消費したエネルギーを砂糖の入った食品や飲料でチャージしよう」という考え方で、SNS等を通じて発信中だ。ご近所手作りスイーツ自慢という参加型の投稿やご近所スイーツマップ公開など、ツイッターのフォロワー数は5年間で約8万6千名となっており、今後も拡大に向けて取り組んでいきたい。そのほか、農林水産省の「ありが糖運動」やJAグループ北海道の「天下糖一プロジェクト」など消費拡大への活動もあり、シュガーチャージの取り組みと連携できればと考えている…

【続きは菓子食品新聞5585号5面へ】