『龍角散ののどすっきり飴』休売「本当に申し訳ありません」龍角散・藤井社長が陳謝

 龍角散は、『龍角散ののどすっきり飴』『龍角散ののどすっきりタブレット』の出荷を停止(休売)している。急激な需要増に供給が追いつかなくなってしまったためだ。藤井隆太社長は「大変ご迷惑をお掛けしてしまい、申し訳ありません」と頭を下げ、休売に至った経緯を語り始めた。

 本紙 年明け以降、休売していると聞いたが。

 藤井隆太社長(以下「藤井」) 昨年の夏が、異常なほどの売行きでした。夏は売上が落ちるので、冬の需要増に備えて在庫を貯めておくのですが、夏場の売上が過去最大となり、それが全くできませんでした。

 本紙 ちょうど、症状として咳やのどの痛みが報告されていたオミクロン株によるコロナ第7波の頃ですね。

 藤井 弊社ののど飴はご存知の通り、医薬品ではございませんが、少しでものどをすっきりさせたいとのど飴をお買いになる。夏前から売上が急激に伸びたので、かなり早い時期から増産をかけました。在庫を増やすために、かなり頑張ったのですが。

 本紙 それでも追いつかなかった。

 藤井 増産で何とか乗り切れると踏んでいたのですが、昨年12月に中国がゼロコロナ政策を転換し、感染者が増えました。そうなると自分で治すしかありません。セルフメディケーションです。中国向けの商品は、10万店舗とECで販売していますが、ゼロコロナ転換が発表された途端、どちらも一気にソールドアウトになってしまいました。こんな事態は、普通あり得ません。

 そうなると、日本で購入して中国へ送る、ということになります。こうしたことから日本でもPOSが急激に伸び、注文が殺到しました。通常の4〜5倍です。

 本紙 異常な数が買われたのですね。

 藤井 こうした事態を受けて、OTC医薬品については一般紙に「第三類医薬品 大量購入及び中国への輸出に関する注意喚起」と題した広告(写真下)を掲載し、それなりの効果がありました。 

 本紙 国名を具体的に出す形での注意喚起広告は珍しい。人口14億超・GDP世界2位の隣国の政策転換は、それだけ日本への影響が大きいということですね。

 藤井 たしかにコロナ禍の初期段階では、ロックダウンで人の流れが止まったことで、売上が相当落ちました。しかし、パンデミックが収束しようとする段階でコロナ特需が発生するとは……思いもよりませんでした。営業が真っ青になって「のど飴が欠品しそうです」と報告してきたので、商品棚を一時的に失うことも覚悟して緊急休売としました。苦渋の決断でした。

 本紙 貴社ののど飴のシェアは25%。それが休売するとなると、市場への影響はかなり大きいものになるでしょう。

 藤井 改めて責任を痛感しています。力が足りず、ご愛用者様、流通の皆さん、同業メーカーの皆さんには大変ご迷惑をお掛けしており、心からお詫び申し上げたい。今は一旦止めていますが、問題点を洗い直し、販売再開に向けて鋭意準備を進めているところです。

 本紙 セルフメディケーションの観点から開発された貴社ののど飴は、オンリーワン・ブランドです。愛用者には代替品がありません。「日本ののどを守って200年」の貴社の歴史と伝統、そして矜持にかけて、一刻も早く出荷を再開していただきたい! 吉報をお待ちしております。

 

※なお取材後、『龍角散ののどすっきり飴』88gとスティックタイプについて、3月中旬以降に出荷が再開できる見込みとなった。