M&Aから見る製菓・製パン業界の未来 ③ 株式会社日本M&Aセンター

食品業界専門グループチーフ 図斉亮介

M&A功者企業、今期も積極的にM&Aを実施

 2022年上半期も菓子業界の多くのM&Aが行われた。その中で、この上期に行われた4案件を紹介していく。

 まず1つ目が、株式会社菜花堂と株式会社シャトレーゼである。譲受け企業のシャトレーゼは東北地方の生産拠点での和洋生菓子を中心とする商品の強固な生産拠点を確保できる。一方、譲渡企業の菜花堂は岩手県で業務用の菓子製造会社、また昭和産業の傘下の企業であり、昭和産業としては、グループ企業間でのシナジーを生み出すことが難しいと判断し、事業の「選択と集中」をする形となった。シャトレーゼホールディングスとしては、昨年の亀谷万年堂に続き、今年もM&Aでの譲受けとなった。

 2つ目が、株式会社清水屋食品と竹下製菓株式会社である。譲渡企業の清水屋食品は、清水敬子社長が当時60歳で後継者不在、また2010年に生み出された「生クリームパン」が2020年に大ヒットし、売上が急拡大しているタイミングであった。譲り受けた竹下製菓は、主力商品としてアイス菓子「ブラックモンブラン」を製造販売している。今回のM&Aにより同じ冷凍品として、商品カテゴリーの拡充となった。竹下製菓は、2020年の埼玉のアイス製造会社「スカイフーズ」に続き、2件目のM&A実行となった。

 3つ目は、株式会社プラチノと株式会社ホワイエである。譲渡企業のプラチノは、都内で2店舗の洋菓子店を運営している企業。チーズケーキ「アンジュ」はロングセラー商品となっていたが、後継者不在となっていた。一方、譲受け企業のホワイエは、ライン生産が可能な工場設備を保有しており、ブランド力のある菓子業態の譲受けを以前から検討しており、本件で実店舗による自社製品販売とブランド力の強化を推進する。

 4つ目は、株式会社SHI-MIZUと株式会社起源ホールディングスである。譲受け企業の起源ホールディングスは、高級食パン専門店「乃が美」の創業者である阪上雄司氏が設立した会社である。譲渡企業のSHI-MIZUは、お芋スイーツ専門店「高級芋菓子しみず」を運営、2018年にオープンし、全国に28店舗運営していた。FC展開のノウハウをもつ阪上氏が、さらにFC出店の加速化を目指していく形となっていく。

 菓子業界では、例年一定数のM&Aが実行されている。譲受け企業にとっては、製造拠点の獲得やブランドの獲得につながり、自社単独での展開よりも時間を短縮することが可能となる。一方、譲渡企業にとっても、後継者不在の解消、譲受け企業の資金力や製造能力を活かし、さらなるブランドの強化・展開が可能となる。M&Aが盛んな業界だからこそ、経営戦略のひとつとしてM&Aを考えていくべきだといえる。

 ずさい・りょうすけ 1991年3月、埼玉県生まれ 中央大学商学部卒業後、みずほ証券会社にて資産運用コンサルティング、大手人材会社にて採用コンサルティング業務を経験後、日本M&Aセンターに入社。食品業界専門グループにて、菓子製造小売業の事業承継支援から菓子製造業の譲受支援まで幅広くM&A支援に携わる。