外林グループの現状と未来を語る①

 2年連続二桁(14%~15%)の伸びをみた広域菓子問屋の外林グループ。伸長を続ける秘訣は何か。同グループを牽引する浦上和明会長(写真左)と佐藤治男社長(写真右)から、これまでの道程や取り組みを聞いた。

売場の問題点は商品で解決

 本紙 はじめに、先般、神戸国際展示場で3年ぶりに「Grandex2022」を開催されましたが、総体的な評価はいかがですか。

 浦上 同時期に関東でも展示会を開催しておりましたので、関東方面の顧客が少なかったような気がします。ですが、コロナ禍の3密対策を行いつつ開催した展示会であることを考えると、手応えもあり総じて良かったと感じています。

 本紙 さて、外林グループが飛躍期と位置付けた2005年(第33期)に佐藤社長が就任されて年商300億円、第二期創成期の創業40周年に当たる2014年(第42期)に浦上会長が就任され、5年後の2019年(第47期)に年商500億円を突破しました。まさに破竹の勢いで業績を伸ばされてきましたが、その要因は何でしょうか。

 佐藤 私が社長に就任した当時の販路は、中国地方が中心でした。2004年にエヌエス物流を立ち上げてから九州地区や中部地区などに販路が広がりました。それにより300億円、400億円と一定の売上はありましたが、その後、停滞していたことも事実です。その原因は何かというと、ひとつには「売上志向に走り過ぎていた」という観がありました。そのため、浦上会長を中心にコンピュータシステムなどを導入して、外林内部の底辺を固めることに転換したのです。

課題の明確化と抜本的な業務改革

 本紙 底辺を固めるとは、営業力の強化を図ったということですか。

 浦上 そうです。西日本の地区から地域へと商圏が拡大されていった時代に、売上が100億円、200億円、300億円という伸び方をしましたが、その一方で、私が業務改革を担当していたころから、営業面のある種の乱れに課題を感じ取っていました。

 本紙 具体的にはどのようなことでしょうか。

 浦上 外林における「顧客第一主義」を考えたとき、営業部門が真に顧客のニーズに応えているか、という機能的部分に課題が見受けられたのです。例えば、営業担当者が店舗の改装や出店作業の応援に駆り出される。あるいは、担当店舗の採算管理を行うなどです。1人のセールスが、取引先から要望されたことを何でもかんでも請け負うという“ブラック的な業務”であっては駄目だと思っていました。卸の営業というのは、専門的な知識を生かして、顧客のためになる本来の業務に専念すべきだと考えています。

 本紙 西日本地域を商圏にしていた時代には確たる営業システムがなかったということですか。

 浦上 その当時から営業システムというものはありました。しかしそれは、実情に合わない「机上で作られたシステム」であったような気がします。それを抜本的に改善するため、私が会長に就任する前、つまり、今から10年ほど前になりますが、現在使っているコンピュータによる営業管理システムを導入したのです。営業の本来業務をコンピュータでシステム化するとともに、それまで営業の下請け的な業務を主としていた「営業事務」という部署を「営業アシスタント」という名称に変えるなど、新たな組織構成と業務の刷新を図りました。

 本紙 営業アシスタントの任務や業務上の効果をお聞かせください。

 浦上 営業アシスタントは、営業関連の情報収集や見積書の作成、商品の改廃など、それまで営業担当が行っていた煩雑な社内作業を「営業アシスタントシステム」と銘打ったコンピュータシステムで集中管理するようにしました。併せて、新設した店舗支援係に、営業担当の応援業務を行わせることで営業担当の負担を軽減し、本来の業務に専念できるようにしました。

Grandex2022で顧客を出迎えるエヌエスグループ各社

提案型商品セールスの強化推進

 本紙 組織改編や新システムが業績の向上に繋がったということですか。

 浦上 それだけではありません。営業担当個々の意識改革も必要でした。過去の営業のやり方は、商品を持って顧客と商談するという「商品先行のセールス」であって、個々の売場の事情に即したものではありませんでした。実際に売場を見て、売場の問題点をしっかり捉えたうえで「このような商品を入れましょう」という提案型営業が重要だと考えています。ですから私は、「お菓子売場のコーディネーターという役割、お菓子売場の課題解決係という役割がセールスの仕事だ」ということを社内で提唱してきました。つまり、「売場の問題点を解決するところに商品あり」ということなのです。

 本紙 社員の意識改革もあって、業績の停滞から脱却したということですね。

 浦上 そういうことになります。過去8年の間、私どもは継続して社員の意識改革を行ってきました。振り返ると、業績が停滞していた時代は、400億円から500億円まで伸ばすのに、約10年の歳月を要しました。現場サイドの頑張りは勿論のことですが、売場を観察したうえでの「提案型セールス」というものが、近頃ようやく浸透しつつあると実感しています。

 本紙 これからの取り組みをお聞かせください。 浦上 外林としては、他社とは違う特別なことをやっているとは思っていません。お菓子の卸業として「当たり前のことを当たり前のようにやり続ける」だけです。外林では、2000年に設立したコンピュータシステムの開発会社(㈱エヌエスシーエス)がありますので、実効性ある営業面のソフト開発もやり続けなければならない、と考えています。

(次号へ続く)