「新・製品開発」のコンセプト エイワ 若手チームが果敢に挑戦

『むにむにだよ』①

 マシュマロ国内トップシェアのエイワが、マシュマロ製造技術を応用した新食感のソフトグミ『むにむにだよ』を発売したのが2020年9月。グミとマシュマロの中間の“むにむに新食感”の噛み心地が楽しく、その美味しさとも相まってジワジワと浸透している。広がりを見せている理由は何なのか、同社の未来へのシード(種子)として注目される『むにむにだよ』の開発ストーリーを追う。

 始まりは2018年の秋、マシュマロを固くするという発想からスタートした。開発事業本部企画開発部開発課の中澤千春主任、鈴木優莉さんをはじめとした若手チームは、「海外のチョコレートコーティングしたマシュマロのチューイーな食感も面白いが、私たちはマシュマロそのもので勝負したいという気持ちがあった。フワフワとチューイングな食感を目指したら、全く違う品質の面白いマシュマロが出来るのではないか」と考えた。

 一言で“固くする”と言っても、そう簡単なことではない。機械に相当な負荷が掛かる。製造工程に与える影響は甚大だ。何十年も前から研究はしてきたが、なかなか進展しなかった。

 「マシュマロは、空気を含んだ状態で最後まで持っていくので、ラインの空気圧の管理は一番大事にしている技術のポイント。固くするためにそれを変えるのは実は大事件であって、色や形を変えるというレベルとは全く違う」

 製造現場からすると、それくらい非常識とも言える話なのだ。それでも果敢に挑んだ。ラインはすべてが連続で動いているので、止めることは決して許されない。試作する時の緊張感は相当なものだったのではないか。

 「怖かった。最初は、無理かもしれないと思ったけれど、とりあえず手探りでやってみた」と鈴木さんは当時を振り返る。まずはやってみなければ何も進まない、という前向きな姿勢が感じられる。

 試作では、酸味のあるグレープ味にすることで、固いマシュマロでも格段に美味しくなり、開発は進んだ。ところが発売直前で、他社が同じような製品を出すことが分かった。

 「まさか…と思ったが、さらに進化させるため、2層構造の生地を目指した」と、さらにハードルを上げ、開発を進めた。同社では、球状タイプでの2層構造はこれまでにもあったが、断面が見えた状態での2層構造は当時は販売していなかった。それがかえって製品をレベルアップさせることになった。

 2層の内側は、酸味を効かせたスッキリとした味わいの黄色に、外側はコンコード種グレープ果汁を使ったジューシーな紫色の生地にすることで、「2つの味が同時に楽しめる。色味も内側を黄色、外側を紫色にすることで、インパクトが出た」。

 こうして、見た目の楽しさが増し、味もレベルアップした形で『むにむにだよ』のグレープ味が2020年9月に発売された。

 コロナ禍や様々な苦労にも怯むことなく、前向きに取り組んだ開発陣の賜物と言える。

(5531号へ続く)