丸彦製菓、米菓の新旧の匠が新製品で技を振るう

 今市に拠点を置く丸彦製菓は、北関東を代表する米菓の匠。うるちともちの両刀使いで、こだわりの製品を生みだす。

 この3月22日発売のもち2製品は、山田邦彦社長とその父である山田行彦会長が、それぞれの技術を尽くしたもの。ターゲットの世代に違いがあるが、現代の米菓ファンに向け、きわめて対照的な特徴が示されていて楽しい。

 『無選別げんこつ 塩味』(200g、参考小売価格450円・税別)は、会長の作。チャック付きパッケージに、ザク詰めした国産もち米100%使用の生地は、こんがりキツネ色だ。一口サイズでヒビが多く入ったげんこつは、従来の〝げんこつ〟のイメージとは一線を画す、軽やかな食感である。

小気味の良い歯応えで砕け、豊かで香ばしいコメの香りが立ち昇ってくる。「従来の焼釜を使っているが、ある工夫をした新しい〝直火焼き〟で仕上げた」(山田邦彦社長)。

杵搗きでコシを作り、厚切りした生地を繰り返し乾燥して水分調整。焼き工程では、熱入れと冷ましを繰り返す焼成をへて、入念に芯まで熱を通してある。しっかり火を通している故の、こわれも混じる無選別だ。

味付けはシンプル。化学調味料を使わず、枕崎産の鰹節と北海道産の昆布のだしと、五島灘産の平釜焚きの塩と植物油で仕上げた。いわば、手焼きのような、おかきの原点を追求した製品で、量産メーカーによる専門店レベルのクオリティといえよう。売価450円は、その自信を示すものだ。

一方の『じゅわっと旨味餅 塩とごま油味』(90g=6袋、同270円・税別)はネーミングからも分かる通り邦彦社長の作。近年、人気の高いn-3系脂肪酸のα―リノレン酸を、豊富に含むアマニ油とゴマ油を使って「栄養機能食品」を謳った軽~い海苔おかきである。2年前に発売した『おてがる腸活おかき』(イヌリン配合)、昨春にブラッシュアップした『ごま好き』(栄養機能食品)に続く健康訴求シリーズである。

近年、TV通販やサプリメントで、注目の高まってきたn-3系脂肪酸。人体では合成できない必須脂肪酸で、サバやイワシに含まれるEPAやDHA、そして注目されているα―リノレン酸の3種が「オメガ3脂肪酸」と呼ばれる。生活習慣病や認知機能改善の効果が報告され、これを豊富に含むえごま油やアマニ油が大人気になった。

本品はクセのある「アマニ油をおいしく食べて頂こうと工夫したもので、独特なにおいをマスキングするため、風味の強い国産海苔をふんだんに生地に練り込んだ」という。国産もち米100%の生地は、ゴマ油と海苔の香りが強く、ひと噛みふた噛みでトロける軽さだ。これは、はさみ焼きを応用した同社独自の〝鉄板焼き製法〟によるもの。

前品同様に、化学香味料は使わず、味付けは枕崎産鰹節と、天然塩2種で、瀬戸内産原料の藻塩と沖縄産塩の『青い海』を使用。油を使う製品ながら〝油っぽさ〟は無く、軽さと、隠し味の唐辛子が連食を誘う仕上げになっている。