『菓子食品新聞』チョコレート特集号2021 ダイジェスト(2)

芥川製菓

13ブランドの個性が競い合う強力ラインアップ

 同社は誰もが知るチョコレート専業の老舗メーカーだ。東京・池袋の直営店やネットなどでしか、芥川チョコの品質の高さと美味しさを味わうことはできないが、それをひと口頬張ると初めて「本物の美味しさ」を知ることになる。年に数回行われるアウトレットセールに毎回、長蛇の列ができるのはその美味しさゆえだ。

 ハロウィンでは昨年好評だった『HWゼリーセット』が今年も登場。ハロウィンのキャラクターと青リンゴやぶどうなどの秋の味覚が楽しめる。クリスマス向けでは今年『クリスマスロングパック』が新しい仲間に加わった。ツリー型のお洒落で綺麗な色の袋に30個(標準)の個包装されたチョコレートが詰まっている。

 年末年始の目玉は『渋沢栄一ミニチョコ12』(写真①)。今年のNHK大河ドラマの主人公で次の1万円札の顔となる渋沢栄一の人気にあずかり、その新札をモチーフにしたミニサイズの板チョコ。図柄は1万円札だが、本体価格は1000円。12個入り。94g。

 バレンタインは今回も特に力が入る。同社の持つ13のブランドは、それぞれが特徴的で個性を競い合う。紙面の都合ですべてを紹介しきれないが、注目製品をいくつか紹介しよう。

 スタンダードシリーズの『ショコラソワール』(写真②)では人気のトリュフを強力にラインアップ。中でも『トリュフ12』(1200円)は、マカダミアナッツ、ジャンドゥヤ、塩キャラメル、ティラミスなど4種類のトリュフを詰め合わせた。ボリューム感たっぷりでお勧め。

 優しい水彩タッチのフラワーシリーズ・プチペタルが新登場。ブーケタイプは400円とお手頃。気軽なプチギフトに最適だ。

 ハイブランド『ホリオス』では『プチカカオ』(写真③)が新登場。トレンドのピスタチオとルビーを小さなカカオポッドの形に仕立てた。キャレと合わせて4種類の味が楽しめる無垢チョコのアソート。16個入りで1000円。

 京都と神戸の老舗茶商の有名茶師・米田末弘氏監修による特別ブランド「放香堂」。お茶とチョコの絶妙なハーモニーが醸し出す美味しさは魅力たっぷり。『ほのか』は抹茶プラリネ、ホワイト&焙じ茶、ビター&抹茶の3つの美味しさを手軽に楽しめる。450円。

 その他『ロゼデュマタン』や『エレナリーゼ』『西洋銀座』などのブランドも魅力的なバレンタインチョコレートを豊富に取り揃えている。すべての製品、ブランドに共通しているのは、創業以来のスピリットの「楽しい夢と贈る心」が詰まっていること。

 「時代とともに変化する消費者の嗜好と要求を製品づくりに的確かつ素早く反映させるために、常に高感度なセンスと高度な生産技術を全力で磨き上げている。これからも多くの方々に豊かな笑顔を届けるべく美味しいチョコレートづくりに挑戦していく」(芥川昌義専務取締役)。

カバヤ食品

『さくさくぱんだ』強化とドトールコラボが柱

 カバヤ食品といえば、『カバヤキャラメル』が特に昭和世代の人々には懐かしい。箱に入ったおまけの文庫券カードを集めて送ると好きな本がもらえるという、当時として画期的な販売施策として強烈なインパクトを残した。カバヤ児童文庫は1952年から1954年までのわずか3年間だけのものだったが、その間、全国の多くの子供たちに夢を与えてくれた。その同社の今秋のチョコレート販売施策は、次のように臨む。

 まずはポケットチョコレートで大人気の『さくさくぱんだ』。今年で発売を開始してから25周年を迎える。そこで同社は「パッケージデザインで積極的なコミュニケーションを図っていく」ことを目指すとともに、セカンドフレーバーとして、ストロベリー&ショコラの新たな『さくさくぱんだ』(写真①)を発売することで、さらに需要を盛り上げていく考えだ。

 また近年の秋冬チョコ市場を牽引している高付加価値チョコレートの分野では、全国的に幅広く展開しているコーヒーチェーン「ドトールコーヒー」とコラボして共同開発したブランド製品『ドトール濃厚珈琲ショコラ』(写真②)を投入、新たな顧客を獲得することでセグメントの拡大を図る。

 さらに袋チョコでは、アーモンド・ゴールドを基軸として、季節限定の『あっさりショコラ』(写真③)の再販売により、今年の秋冬チョコレート需要を取り込んでいく。アーモンドとゴールドは昨年好評だった「増量施策」を今年も実施していく。

  「当社の理念である『突き抜けた美味しさと人々が成長できる楽しさ』、そして『美と健康』を通して社会的な意義を果たすこと。チョコレートに限らず、これが当社のお菓子づくりにおけるポリシーと目指す姿」と同社は語る。同社の人々に優しく寄り添う姿勢は、創業当時(1946年)から何ひとつ変わっていない。

三立製菓

チョコバット群と源氏パイチョコの拡充に注力

 1921(大正10)年に創業し、今年10月に創立100周年を迎える同社のチョコレート関連の秋冬の施策は、昨年と同様に「おうち消費・家庭内消費・おうちバレンタイン」の3本柱を軸に展開する。とりわけこの時期に注力する製品は、『チョコバット』群と人気の『源氏パイ〈チョコ〉』だ。

 1964(昭和39)年発売のロングセラーで、パン生地にチョコレートをコーティングしたスティックタイプの『チョコバット』シリーズ。駄菓子のホームラン王と呼ばれ、昔から子供がワクワクする当たり付き企画がいっぱい。パッケージ裏面に印刷されているホームラン1枚またはヒット4枚でもう1本もらえる『チョコバット』とエース1枚またはストライク3枚でもう1本もらえる『チョコバットA(エース)』、箱の中にオリジナル図書カード(500円分)が入っていれば当たりの『ミニチョコバット』(5本)、そしてファミリーサイズの『がんばれチョコバットくん』(9本)という多彩なラインアップだ。

 翌1965(昭和40)年には、同社定番の『源氏パイ』を発売。このサクサクのパイ生地にまろやかなチョコレートをコーティングしたのが『源氏パイ〈チョコ〉』(個包装10枚)だ。大人気のこの製品は、秋冬だけではなく通年販売を望む声が後を絶たない。さらに、バレンタイン時期には、デコ提案パッケージに切り替えて販売していく。

 また、バレンタイン専用品として、おしゃれな赤箱パッケージに、源氏パイをチョコレートでフルコーティングした『源氏パイチョコ包みギフトBOX』(個包装16枚)に特に注力していく構えだ。

でん六

アフターコロナ見据えた取り組み

 「マメに生きる」をモットーとする同社は、日本を代表する豆菓子のスペシャリストとして知られるが、そのこだわりは豆だけではない。ロングセラー製品『ピーナッツチョコレート』(ブロック)を1974年に発売して以来、チョコレートづくりを40年以上続けている。現在のチョコレートのラインアップも、長年培った技術力と、ニーズを見据えたブラッシュアップによるものだ。

 2021年秋のチョコ商戦は、昨年に引き続き、『ロカボナッツチョコ』『ポリッピーチョコ』を柱に注力する。いずれもコロナ禍における「健康意識の高まり」や「おつまみ市場の需要増」という追い風を受けて好調に推移しているが、その流れはコロナ禍になる前からの兆しでもあったと、同社担当者は話す。

 前者は「美味しく楽しく適正糖質」を目指す同社の象徴的な製品。厳選したピーナッツ、アーモンド、クルミをシュガーレスチョコレートでコーティングした。糖質を気にする意識の高い女性をはじめ、幅広い層から支持されている。フック穴付き34gの小袋タイプと小袋10個入りの160gタイプ(写真①)の2種を用意。特に160gタイプは実勢価格が600円前後にもかかわらず好調で「巣ごもり需要と健康志向のニーズが合致したのではないか」と同社は分析する。

 後者は、カリッと香ばしいピーナッツをチョコレートでコーティングした、サクサク食感と甘さが好バランスの製品。消費者からの支持に応えるべく、3年ほど前から生産体制を強化してきた。「昨年からCVSでの販売を開始したところ、暑い夏場でも動きが良かった。家飲みなどのおつまみ需要にも合致したのではないか」と同社。

 そうした経緯もあって、今年は55gの「とってもいいサイズ」、65gの「エコノミー」に加え、小袋が11個入った115gタイプ(写真②)を新たに投入。衛生ニーズに応える食べきりサイズの追加で、さらなる市場拡大を見込む。

 昨年は抹茶味に絞っての展開だった『あずき甘納豆チョコ』は、名称を『あずきチョコ』(写真③)に変更し、今年は手に付きにくい材料を使用した珈琲(モカ)味を追加。でん六ならではの技術力によって小豆にチョコレートをコーティングした同製品は、隠れたヒット作。新味の追加で、さらなる認知向上を図る。

 このほか、『130gコーンチョコ』『柿の種チョコ』も、巣ごもり、おつまみ需要を受けて好調だが、コロナが収束したときにいかにリピーターを獲得できているかがポイントになると同社。そのためのものづくりに注力していくと話す。

大一製菓

湘南の風に乗ってピーチョコ60周年!

 「美味しくて高品質なチョコレートを少しでも多くの人々に届けたい。それを手頃な価格で…」。創業者・一杉和一氏(現社長・直樹氏の祖父)の願いは、創業から3年後の1961年、チョコレートにピーナッツを混ぜ合わすという画期的なアイデアの『ピーチョコ』(写真①、70g×20個入り、OP、登録商標)として結実する。カリッと香ばしいピーナッツとまろやかなチョコレート。両者の織りなす絶妙なハーモニーは多くの人々を魅了するとともに『ピーチョコ』という新たなジャンルを確立。日本のお菓子史上においてもエポックメーキングとなるお菓子となった。

 今年で誕生60周年の記念すべき節目を迎えた『ピーチョコ』だが、変わらぬ最大の魅力は「食べ応えのある手絞り風の美味しさ」だ。

 「昨年、新しい製造設備を導入し、より一層製品の均一化を図るとともにチョコレートの生地を改良した。これにより謳い文句である『まろやかチョコと香ばしいピーナッツ』という理想にまた一歩近づけることができたと自負している」と一杉社長は話す。

 新型コロナウイルスがもたらした巣ごもり需要は、お菓子の売り方にも大きな影響を与えた。定番ロングセラーの大袋製品がよく売れるというのもその変化の一つ。同社『お徳用』シリーズはいまSMなどで人気の売れ筋となっている。特に『お徳用ひとくちチョコレート』(417g、OP)と『お徳用ミルク&ホワイチョコレート』(380g、OP)が人気を牽引。さらに今年は新製品の『お徳用糖質50

%オフミルクチョコレート』(写真②)がラインアップに加わった。

 「カカオとミルクをふんだんに使っているのに糖質50%オフを実現した意欲作。美味しい甘さもたっぷり」(一杉社長)。

 そして大一製菓といえば『くちどけショコラ』シリーズだ。人気定番の『ショコラS』(69g、OP)と『カカオショコラS』(64g、OP)に加えて、今年は『キャラメルショコラ』(64g、OP)が新登場。豊かでコク深いキャラメル味が楽しめる。

 「当社が本社工場を構える『湘南・茅ヶ崎』は有名映画スターや人気ミュージシャン、文化人たちがいまも数多く住んでいて、日本人の多くが憧れる街でもある。その爽やかなイメージの中で『大一製菓』という企業のブランド価値をさらに磨き上げていきたい。ここ茅ヶ崎から『湘南の風』が感じられるような美味しいチョコレートづくりに今後とも励んでいきたい」(一杉社長)。

チロルチョコ

〈きなこもち〉復活! 大袋にも注力

 「上期は、当社の目標及び昨対ともに上回った。昨年に発売を始めた〝大袋タイプ〟の戦略が全体を牽引した」と、松尾裕二社長は今年前半を振り返った。通年販売だった『チロルチョコ〈きなこもち〉』を春に終売した分の落ち込みまでフォローできたという。だが売り上げに影響を及ぼすほどの同製品を、なぜ終売したのか。それこそが今季のための仕掛けだった。

 「もともと〈きなこもち〉は、冬季限定の発売だった。10年以上経つと〈ミルク〉と同列に並ぶほどの人気ブランドになり、数年前、年間を通じての定番製品にした。しかし以降は、結果だけを見るとダウン気味。大事な人気ブランドである〈きなこもち〉の寿命を考えると、今一度、冬季限定に戻した方が良いと判断した」と松尾社長。

 秋が来てSMやDgSに同製品が陳列されると「〈きなこもち〉の季節がやってきた」という空気感があった。通年製品となり、小売店側も施策を練るのが難しくなった点もある。そこできっちりと一旦終売した。

 伏線として、Twitterの公式アカウントで毎週金曜日に4コマ漫画『もちくん物語』を掲載。物語は3月を迎えると、人気者だったもちくんの人気が一転して低迷し、炎上のあげく行方不明になる展開になって、同時に生産終了がリリース。SNSでも「もちくん」と終売の連動は話題に上った。

 そして半年が経ち、『もちくん物語』は9月第4金曜に大団円を迎えた。満を持して10月4日、〈きなこもち〉の復活。香ばしさをアップした『きなこもち〈袋〉』(写真①)と、『キャラメルもち〈袋〉』(写真②)を同時に発売。前者は冬季限定、後者は12月に『みるくもち』発売へとバトンタッチする。

 大袋の注力製品は、11月発売の『チロルチョコ〈冬のバラエティパック〉』(写真③)と、『チロルチョコ〈ミニミルク〉』。

 今後については「しばらく節約志向が続くのではないか。お得サイズの〝大袋〟ジャンルを拡大させていきたい。売価を競うのは難しいが、企画から製品化までの開発スピードや、多彩なバリエーションが当社の強み。催事でも、単にパッケージだけ変えるのではなく、形状や中身のフレーバーまで作り込んできた。機動性と付加価値で勝負していく」と松尾社長は気概を見せる。

寺沢製菓

カカオ70%チョコが定番化

 創立63年目を迎える同社は、「よりよい菓子の製造を通して、地域社会に喜びと楽しみを提供する」という企業理念の下、OEMを中心に、安心安全を最優先にチョコレートを製造する専業メーカーだ。

 今年も、昨年から続く巣ごもり需要により、業務用スーパーからも引き合いが多い業務用チョコレートシリーズ(ミルクチョコレート/ミルク&ホワイトチョコレート/ビターチョコレート/カカオ70%チョコレート個包装、各1㎏入り)が好調だ。なかでも食べやすくて味に定評がある『業務用カカオ70%チョコレート』(写真)もブームではなく、定番化を遂げることができた。

 取手工場内の直売所は現在販売を取りやめ、「ゆめみ野工房」(茨城県取手市)で、コロナ禍による密を避けるため、9月は第2・第4日曜日の午前9時から午後3時までの短い時間で小刻みに販売している。

 また、ネット通販サイト「ショコラティエ・テラサワ」(昨年6月1日開設)は、イチ押しの『てらチョコバー』や人気の『カシューナッツ』(全8味)シリーズなど、ここだけの製品が購入できるのも魅力だ。「新製品のテスト販売で消費者の反応が見られるのもネット販売を立ち上げて良かったと思う」(寺澤光弘社長)と語る。「ただ、8月1日より運賃や原材料の高騰を受け、送料無料の基準を購入価格5000円以上から8000円以上に引き上げざるを得なかった」(同氏)とも話した。

日清シスコ

オートミール4品投入、シリアル市場の拡大目指す

 『チョコフレーク』(写真①)シリーズは、鉄分に加えて今回新たにカルシウムを配合し、健康志向の高まりに応えている。大人向けの味わいの『至福の贅沢カカオ』や子供も食べやすい『ドーナツチョコ』などターゲットを分けた6品を展開し、ブランド全体で需要層を広げていく構えだ。

 さらに、人気のオートミールを気軽に美味しく楽しめる『日清シスコのホットシリアル』シリーズ4品を9月27日に発売したばかり。

 オートミールは、栄養価の高さや調理におけるアレンジの幅の広さから人気が高まっているが、同社の調査で「どうやって食べるの?」「美味しいの?」「続けられそうにない」といった意見があることがわかった。そこで今回、「興味はあるけれど一歩踏み出せない」という層に向けて、オートミールを毎日の生活に気軽に取り入れ、続けていくことができる4品を製品化した。

 『おいしいオートミール』(写真②、300g・330円)は、栄養バランスにこだわったアレンジしやすいプレーンタイプで、パッケージ裏面にはアレンジレシピを載せている。同社ならではの特徴は、栄養機能。1食30gで1日に必要な7種のビタミンの3分の1が摂取できる。

 『おいしいオートミール トマトクリームリゾット風/チーズクリームリゾット風』の2品(写真③④、各160g・330円)はこれまでにない味付きタイプで、牛乳をかけてレンジで温めるだけでリゾット風になる。

 『おいしいオートミール オートミールフレーク』(写真⑤、200g・330円)は、シリアルで馴染みのあるフレークタイプ。ほのかな甘さで、ホットミルクをかけるとザクザク食感が楽しめる。

 4品をホットミルクで温めて食べる「ホットシリアル」として打ち出すことで、秋冬にもシリアルを定着させ、市場の総需要拡大を目指そうという同社の意気込みを感じるラインアップだ。

フルタ製菓

ファミリー定番をしっかりと売る!ピスタチオが人気

 1999年に動物シリーズでデビュー、いまや食玩を象徴するブランド『チョコエッグ』でおなじみの同社。2年目のコロナ禍を迎えても業績は好調だ。今年秋のチョコレート商戦について梅山栄二取締役(東京・北関東支店統括支店長)に聞いた(以下談)。

 ファミリー需要は今後も安定的に推移していくと見ている。チョコや焼菓子を中心としたファミリー向け製品の販売強化を引き続き展開していく。昨年発売の『KT‐11乳酸菌チョコレート』のような健康志向製品の開発もさらに進める。

 今期も「強い製品をより強く」という姿勢で臨む。特にファミリーチョコレートの基幹製品の『生クリームチョコ』や『ドレミファチョコ』、さらには宅飲み需要の追い風を受けて人気拡大中の『柿の種チョコ』(写真①)の3品は強力ラインアップとして据えていく。

 ちなみに『柿の種チョコ』はお陰さまで今年で発売10周年を迎えることができた。柿の種の中にチョコをふんだんに入れ込んだ独自製法。独特のザクザクとした食感が受けている。また『生クリームチョコ』では新しくピスタチオ味(写真②)を加えて、8月から発売を開始したが、予想をはるかに上回る売り上げで生産が追いつかないくらいだ。

 コロナ禍が続く中で、各流通と営業担当者との接点が制限されている。そうなると新製品よりも「実績と安定感のある定番品」やロングセラー製品は今後とも市場の軸となり続けると思う。流通の現場で棚にしっかりとフルタの製品を提案できるよう、定番向けの製品開発を今後とも強力に進める。

平塚製菓

ウエハースチョコなど意欲作が続々と登場

 同社といえば一昨年「奇跡」と呼ばれた東京産のカカオ栽培の成功が記憶に新しい。同社のチョコレートづくりにおける技術力と製品開発力の高さは、ある意味で必然としてチョコレートに特化したOEM企業として名を馳せることにもなった。しかしカカオの栽培成功は自社ブランドメーカーへの脱皮を図る大きなきっかけを与えてくれた。もともとは京都で1901年に開業した和菓子製造の老舗。今年でちょうど創業120年を迎えることになる。自社ブランドを立ち上げてNBメーカーになることは平塚正幸社長の長年の悲願でもあったのだ。しかも昨年9月には待望の香取工場(千葉県)が新たに本格稼働。

 「新工場により当社の生産性は大きく上がり、より安心安全な製品を供給できる態勢が整った。流通菓子の生産拠点としての機能も持たせている。長年にわたって百貨店や専門店、お土産市場へOEM供給してきた経験を活かして、チョコレートやウエハース、焼菓子などの流通菓子で『HIRATSUKA』というブランドを大切に大きく育てていきたいと考えている」(小川優専務取締役)。

 その同社の今秋チョコ商戦でイチ押しとなるのが、香取工場で生まれた新製品『ブリリアントタイム ウエハースチョコレート』(写真①)のチョコレートとアソートの2種類。アソートタイプにはチョコとキャラメルといちご風味の3つのフレーバーが入っている。ほのかに甘く香るウエハースの上品な歯ざわりが何とも言えない懐かしさ。

 サクサクしたウエハースをつくるのは簡単そうで実はそうではない。技術力の高さがすぐに分かるお菓子だ。ウエハースの美味しさだけでも、そこに同社の真骨頂が見て取れる。チョコレートタイプはそのウエハースにココアクリームをサンド、リッチなチョコレートでコーティングしたもの。しっかりとしたコクがあり、食べ応えも充分だ。キャラメルもいちご風味も同様、かなりハッキリとした味だが、決してしつこくはない。

 どちらも1袋に個包装で15〜16個入っているので、家族で分け合って楽しむこともできるだろう。どちらも店頭売価は298円。

 もう1つのイチ押し製品が『大人の葡萄ゼリーチョコレート』(写真②)。芳醇な香りの葡萄ゼリー(ペクチンゼリー)をほど良い甘さのビターチョコレートでコーティング。口内に広がる果汁とショコラが織りなす「大人の味わい」が楽しめる意欲作。ペクチンゼリーは寒天ゼリーやゼラチンゼリーに比べ、もっちりとした食感が特徴。柑橘類から抽出されるので、フルーツ系との相性も抜群に良い。

 「素材にこだわり、贅沢に仕上げた。ぶどう本来の味わいを大切に甘みと酸味のバランスが最高。ご褒美スイーツとしてもお勧め」と小川専務は自信を滲ませる。

 「お菓子には『幸せなひと時』を創造する力があると、私は信じている。いま弊社の経営ビジョンには『お菓子を仲立ちとした愛あふれる平和な社会を築き上げよう』という理念を掲げている。この言葉通り、これからも誠心誠意、一生懸命に美味しいお菓子、チョコレートづくりに励んでいく」。

有楽製菓

ブラックサンダーの日CP プレミアムで攻める

 9月6日をクロ(96=黒=ブラック)にかけて「ブラックサンダーの日」と制定した同社。制定記念にLINEアプリを利用し、5000名に総額500万円分のQUOカードが当たるキャンペーンを、2022年2月28日まで実施する。

 同時に、女優の倉科カナと、お笑い芸人ユニット・ジャングルポケットの斉藤慎二を起用したWebCM「黒雷探偵事務所~怪盗ブラックを追って~」を公開した。順次全7エピソードを配信。ブラックサンダーがコーヒーに合うお菓子№1に選ばれたことから、様々なシーンでブラックサンダーとコーヒーを楽しんでほしいと、コミカルな内容になっている。キャンペーンと、コーヒーと食べ合わせTVCMの公開をきっかけに、『ブラックサンダー』を購入して食べてみるきっかけづくりを作るのが目的と同社。

 秋冬で注力するのは、9月から販売開始するブラックサンダープレミアムシリーズ『ブラックサンダー至福のバター』(写真)。昨年9月の発売初週からSNSを中心に注目を集め、『ブラックサンダー』史上で過去最高出荷金額(発売から6カ月時点)を記録し、出荷本数が1000万本を超えた大ヒット製品。この秋、さらにコク深さをアップして再登場。W発酵バターのさくほろ食感のバタービスケットに加え、チョコレートに溶かし入れた焦がしバターで、噛むほどにバターの味わいが広がり、この上ない幸せを感じられるチョコバーに仕上げた、と同社イチ押しだ。

 今季は、コロナ禍のまとめ買いおよび大袋需要の高まりを受けて、大袋に注力しつつ、プチ贅沢需要に対するプレミアムシリーズを展開していきたいという。

 ブランド全体の戦略としては「〝コーヒーに合うブラックサンダー〟のプロモーションを行いつつ、第1弾の『至福のバター』以降は、12月に第2弾、来年3月に第3弾を予定しているブラックサンダープレミアムシリーズの発売を主軸に展開し、同シリーズの存在感を高めて食感系チョコレートのカテゴリーを牽引していきたい」と同社は語る。

やおきん

密を避ける施策で回復目指す

 駄菓子は不況に強いというが、昨年は春先から夏にかけて休校を余儀なくされ、子供達は巣ごもり。各種イベントもことごとく中止となった。今年はワクチン接種が進む中、対策を練った上での開催も徐々に実施され、需要もある程度回復。実績は前年より好調で、一昨年に近い状況へ戻りつつあると同社。

 例えば、7月は本社がある錦糸町のショッピングパークで、地元の企業と一緒になって盛り上げようという「うまい棒祭り」の企画や、オンラインでは、5月に日本中央競馬会とのコラボで日本ダービーをPRした「ウマい棒ダービー」キャンペーンの開催など、コロナ禍にあっても可能な施策を試みてきた。

 お菓子や駄菓子がTV番組などメディアで取り上げられることが多かった点も幸いしたという。旅行や遠出する行楽ができず、代わりにテイクアウトや通販でお取り寄せが増え、駄菓子も同様にECサイトや近場でのショッピングで買い置きして、家の中で過ごすニーズが高まった。

 昨年から巣ごもり需要の中で好評なのはポットタイプのチョコで、なかでも『100個海賊金貨チョコポット』(写真①)は売れ行きが良く、今年も注力する。少し小ぶりの『60個海賊金貨チョコポット』や、ゲームの景品などに適した『1KGバルク海賊金貨チョコ』をこの秋冬に新発売。10円台では、『うまい棒チョコレート』や、サクサクのビスケットにチョコレートをコーティングして星座をモチーフにした『星座チョコ』(写真②)、『チョコカケチャッタワッフルクン』など、駄菓子のチョコも1つの製品を長く売り続けるために、リニューアルや改良を繰り返している。

 大きな施策としては、昨年始めた「うまい棒川柳」を今年も募集。11月11日「うまい棒の日」を締切日とした。今年の大賞賞品は「愛媛の道後温泉 大和屋本店ペア宿泊券2泊3日分」1組で、日本酒飲み放題、駄菓子食べ放題。『うまい棒』も全種類揃え、駄菓子を満喫できる。優秀賞は「うまい棒 約11年分」を5名にプレゼント。昨年より1年分増えてパワーアップ。