トップインタビュー 太陽誘電ケミカルテクノロジー代表取締役社長 石黒利昭氏

驚異のJCコート! 新潟米菓メーカーも導入

 世界的な電子部品メーカーとして知られる太陽誘電。その子会社である太陽誘電ケミカルテクノロジー㈱(群馬県高崎市)が開発した表面処理膜技術『JCコート』が菓子・食品業界で大きな注目を浴びている。驚異の撥水撥油性能を聞きつけた米菓メーカーは既に導入を開始。製造ライン機器のクリーニングに革命的インパクトをもたらし、省人化と省力化に大きな成果を収めている。同社の『JCコート』の魅力とは何か。石黒利昭社長にきいた(前編)。

 世界の太陽誘電が誇る微細加工技術

 

 本紙 太陽誘電といえば、いまやモバイルネットワーク社会に不可欠な積層セラミックコンデンサの分野で世界的に有名な企業ですが、どのような理由で、どのような技術で菓子・食品業界に挑もうとされているのかをお聞きします。

 はじめに、御社の沿革などを教えてください。

 石黒 戦後間もない1950年(昭和25年)、初代社長の佐藤彦八が太陽誘電を創業し、電子部品を中核に研究開発型企業として発展しました。特に積層コンデンサの分野では、セラミックス材料粒子を均一サイズに微細化する事で、同容量での小型化を実現しています。数ミクロンの電極シートを何百層も重ねた超小型のコンデンサが有るからこそ、モバイルネットワーク社会の主役であるスマートフォンの性能を格段と向上させることができるのです。

 最近では2019年に世界最薄0.064㎜厚の積層セラミックコンデンサの商品化を実現しています。当社は、太陽誘電が手掛ける電子部品製品のめっき処理を専門に行う子会社として1970年に誕生し、2015年に現在の社名に変えました。

 本紙 まさにナノテクノロジーの世界ですね。

 石黒 親会社の太陽誘電自体が「5G時代」を迎えたスマートフォンやそれらの中継基地、さらにはパソコンや自動車の自動運転などの需要も後押しとなり、弊社としても「新たなチャレンジをしたい」という社内的な雰囲気が高まり、菓子・食品業界で弊社の技術を活かしたいと考えました。

 

 『JCコート』が挑む菓子・食品分野

 

 本紙 それが御社の『JCコート』へとつながるわけですね。

 石黒 『JCコート』とは、当社を含む太陽誘電グループが長年培ってきた表面処理技術の一つです。前述したように、超微細な電子部品の製造過程では、極めて高度な表面処理加工技術を必要とします。材質も工法も全く異なりますが、JCコートの開発と撥水撥油機能を高めるにあたっては、これまで培ってきたノウハウが多いに役立ちました。

 本紙 『JCコート』を御社事業の柱にしたきっかけは?

 石黒 太陽誘電の登坂正一社長が「何でもやってみよう」というチャレンジ精神旺盛なこともありますが「親会社とは違う独自の新しいビシネスを始めよう」というスタンスで「撥水撥油」を核とする特殊技術が菓子などの食品製造ラインの機器洗浄に威力を発揮すると考えたのです。当社にとって食品業界はまったくの門外漢でしたが、実際に菓子メーカーに『JCコート』を使ってもらったところ、私どもの予想を上回る好反応を得られたのです。そこで2018年に『JCコート』の商標登録を行い、本格的にビジネスの拡大を図ることにしました。

 本紙 『JCコート』の何が受け入れられたのですか?

 石黒 米菓メーカーの場合ですと、味材をまぶした製品が振動フィーダーで流れていきますが、設備へ味材付着が多くなり課題となっています。

 『JCコート』をコーティングした振動フィーダーだとほとんどくっつきません。スナック菓子の製造過程でも同じで、味材が付着しにくく、清掃が容易になるという利点が評価されました。。今では、米菓メーカーに弊社の『JCコート』を採用していただいています。

 (後編へ続く)