トップインタビュー カルビー株式会社 伊藤秀二 代表取締役社長兼CEOに聞く

 2020年は、コロナ禍で生活スタイルが大きく変わり、業界も巣ごもり需要が高まる一方、カルビーでは、お土産需要の激減など大きな変化にも直面した。その激動下でも、同社は果敢に新しい挑戦を続けている。昨年8月には、ホクレンと北海道農産物の振興に向けて連携協定を締結して原料調達の安定化を進めている。またニューノーマルなライフスタイルに合わせた商品開発や販売提案を強化している。そこで、伊藤秀二代表取締役社長兼CEOに、カルビーの「新しいモノづくり」についてインタビューした。

農業振興に繋がる協業モデル構築

 

 -----コロナ禍ではどのような影響があったか。

 伊藤 国内においては、インバウンドやお土産用商品の需要が減少した一方で、家庭での巣ごもり需要によってスナック食品やシリアルをお求めになるお客様が増え、購買行動や食へのニーズに変化が見られた。

 -----そうした変化にどのように対応したか。

 伊藤 当社グループは、一方、スナック食品では新シリーズの展開や、食感バリエーション技術の強みを活かしたポテトチップスの全国展開、豆等のたんぱく質含有量の多い素材を使った商品の販売拡大に注力した。シリアル事業では、外出機会が減少する中で簡便性の高い食品としての需要が高まった。そのご要望に応え、間食シーンに適した商品を発売するなど、食シーンの拡大も進めた。

 -----こうした影響から得たものは、どのようなことがあったのか。

 伊藤 コロナ禍にあっても、国内外のお客様から当社の商品を多数お求めいただき、カルビーグループの事業は持続可能な社会生活を支える一助にもなれると確信できたこと。同時にコロナが収束すれば、必ず新しい価値が要求されるということ。コロナ禍への対応を通して、持続可能な企業活動を実現することこそが、カルビーグループが果たすべき、社会全体に対する大きな責務だと再認識したことだ。

  -----ホクレンとの連携協定(注1)の経緯と狙いは。

 伊藤 馬鈴しょの調達体制の強化や北海道産農産物の振興に向けて、ホクレン農業協同組合連合会と包括連携協定を締結した。北海道の農業を取り巻く環境は、海外生産者との競合や足元での営農形態の多様化など、大きな変化に直面している。その中でホクレンは、本提携を、農産物の流通量の確保や生産基盤の維持・強化、生産者の経営安定化に向けた布石と位置付けている。当社グループはホクレンとともに、貯蔵・物流分野におけるノウハウ共有、商品共同開発を通じた市場開拓を進める。今般の業務提携を礎にして、双方の強みを活かしながら農工一体を実現し、北海道の農業振興に繋がる協業モデルの構築を目指す。

 -----協業第1弾として『CHIPS NEXT Original』(注2)を発売した。

 伊藤 同商品は、ホクレンオリジナルブランドの馬鈴しょ「よくねたいも」を原料にした、新コンセプトのポテトチップス。今後とも、両者のコラボレーションにより、馬鈴しょを原料とする商品はもとより、広く北海道の農作物を活用した商品開発を強化していく…

(続きは5493号3面へ)

 

(注1)カルビーは昨年8月、ホクレンと連携協定を締結し、流通から製品開発の協業と、新たな食領域への事業確立を目指すことになった。

(注2)『CHIPS NEXT Original』は、「よくねたいも」の特徴を生かすため味付けをしておらず、素材本来の甘みを味わうことができる。通常のカルビーの『ポテトチップス』よりも厚さがあり、ホクホクとした食感で食べ応えがあるのが特徴。

いとう・しゅうじ 1957年2月25日生まれ。福島県出身。1979年=法政大学 経営学部卒、カルビー入社。1999年=関東事業部長、2001年=執行役員 東日本カンパニーCOO、2004年=取締役執行役員、2005年=取締役常務執行役員、2009年=代表取締役社長兼COOなどを経て、2018年から現職に。日本スナック・シリアルフーズ協会の会長を務める。