科学的分析に基づく「おいしさ」の追究‼ 丸彦製菓

 一昨年暮れに世代交代した丸彦製菓では、山田邦彦社長のもとコロナ禍の1年を経て、新たな局面を見せだした。北関東の雄と呼ばれ、先代山田行彦会長のもちとうるち両面にわたる技術力で、関東米菓界では一目置かれている同社。新世代がけん引する丸彦製菓では、新製品に新たな開発メソッドを取り入れた。邦彦社長の発想とその開発手法を、今春発売される新製品を例に見ていく。

 現会長の山田行彦氏の子息邦彦氏が社長就任後に発表した第一作が、低糖質&水溶性食物繊維イヌリンを使った健康訴求系米菓、3味アソート『おてがる腸活おかき』(写真上、90g=15g×6袋)だった。

 伝統的な作りを守る一方で、『おてがる腸活おかき』は、若い世代へのアピール要素を盛り込んだ米菓の「ニューエイジ」として売上も好調だ。

 この製品の第一の魅力は、イヌリン入りという点。善玉菌のエサになり、腸内環境を改善して女性に多い便秘の改善や、血糖値の上昇を抑制するなどの効果があるとされている。もう一つが低糖質。一般的なおかきに比して、糖質を38%オフ。多様な食物繊維を使い分けながら、食物繊維の1日に必要量を小袋2つで賄える製品だ。発売後、消費者から「便秘が改善された」など、多くの反響が寄せられているという。

 また、味わいの面では、スーパー大麦入りのココナッツ味、ひじき入りのかつお醤油味、そしておからパウダー入りのチーズ味の3種入りとし、お茶ばかりでなく、コーヒーや紅茶など、多様なお茶シーンを演出できる上に、化学調味料不使用とくる。

 最近では乳酸菌やプロテインなど、総合メーカーの健康志向系製品の開発が盛ん。伝統ジャンルの米菓でも、栗山米菓の『間食健美』や亀田製菓の『減塩柿の種』など、健康志向製品の市場投入が図られ、お菓子業界の一つの流れとなっているなか、『おてがる腸活おかき』に続く2製品が、この春夏にむけ登場する。


データを可視化しおいしさを創る!

 今春3月、中下旬に出荷予定の2品とは、リニューアルされた『ごま好き』(写真上右、112g=7袋、参考小売価格270円・税別)と、新製品『心味(ここみ)揚げ餅』(写真上左、128g=8袋、同310円)。ともに丸彦製菓が得意とする、うるちともちのベーシック・ラインだ。しかしこの2品は、従来の製品設計とは違う、科学的な分析という新たなプロセスを経て完成されたもので、同社のモノ作りへの新しい手法で完成されたのである。

 うるちの『ごま好き』はロングラン製品。国内産米100%の生地に、ゴマを60%加えたもの。従来からゴマに含まれるセサミンの抗酸化作用は広く知られ、サプリメントとしても多様なものが流布している。「栄養機能食品」(カルシウム、マグネシウム)を掲げた人気アイテムとして人気が高い。「コロナ禍の影響もあって、ゴマの製品の売れ行きが良い中、弊社でも一番問い合わせが多い製品」(山田社長)ということから、ゴマ入り米菓のナンバーワンに育てたいと、多角度から見直してブラッシュアップをおこなった。

 キーワードは「安心感」と「進化」。ロングセラーの製品がファンに提供する安心感とは、変わらぬ「おいしさ」、「同じ商標で同じ売り場にある」、変わらぬ「機能性」。進化とは「おいしさのグレードアップ」、「品質UPとコスト削減」、「機能性のUP」である。

 製品のおいしさUPについては、栃木県産業技術センターの食品技術部の協力のもと、味覚センサーを使ってデータを可視化した。おいしさの要素を「ゴマ感」「後味コク」「ゴマ苦み」「味わい深さ」「味のしっかり感」の5つに絞り、従来品のデータをとって改良を施したのだ。食感はテクスチャーアナライザーで分析。さらに官能検査も加えて、ザクッとした食感を「サクッ、サクサク」へと改良したのである。

 機能性のUPでは『ごま好き』の味噌だれとの相性とパフォーマンスを勘案し、味噌醤油の醸造会社イチビキが開発した「蔵華乳酸菌」(特許取得の新素材)を使用。1袋当たり128億個を含む。食物繊維は同じく8.4gを配合。これにもイヌリンが加えられている。

 一方、国内産もち米100%の生地に国産昆布を練りこんだ揚げ餅『心味(ここみ)揚げ餅』は、丸彦らしく、オール国産原料でシンプルなおいしさを追求した。米菓の人気カテゴリーへの投入に当たり、ライバルとなる人気商品3品をベンチマークして研究し、完成させた自信作。「高品質の本格揚げ餅」を目指した。

 この揚げ餅の風味を活かすポイントは3種の天然海塩。それぞれの特性を勘案したブレンドにあり、目指したのは「カドの取れた塩味」である。

 マイルドで旨みを感じさせるそのブレンドとは、五島灘産平釜炊きの「にっぽんの海塩」62%、沖縄産海水塩「青い海」15%、そして瀬戸内産原料の「藻塩」を23%。味わいを決定するブレンド比は、従来なら企業秘密。それを「表示法の変更で出すことだから」と、邦彦社長はあっけらかんと明かした。さらに旨みの要素として、米油をコーティングに使って仕上げられている。

 伝統ジャンルの米菓界では、長年の経験で培った技術や、匠の勘が機械の性能を越える世界。邦彦社長の作った今回の2製品には、北関東の雄の技術にさらに科学的分析という要素が取り入れられたところに注目したい。

 【菓子食品新聞 5487号3面より】