=新技術紹介=
新型コロナウイルスの影響で消費者の安全性に対する意識が高まる中、「抗菌印刷」という新しい技術に注目が集まっている。抗菌印刷とは菌の繁殖を99%以上抑制する特殊な技術。千葉県市川市が本社の中堅印刷企業の弘文社では、いち早く抗菌印刷の優れた性能と応用性の広さに着目し、他に先駆けてお菓子業界への導入提案を進めている。業界の関心も高く、都内某和菓子店では抗菌印刷による包装紙の採用を検討しているという。湯浅秀俊社長(写真)にきいた。
- 堅実経営の印刷会社がどうして抗菌印刷に力を入れるのですか。
湯浅 コロナ禍で衛生面に神経を尖らせ気遣う企業が業種を問わずとても多くなってきました。特に食品を扱うお菓子業界さんはその傾向が強いですね。もともと私自身「人さまのお役に立ちたい」という思いが強く、新型コロナウイルス問題にも「印刷技術で貢献できることはないか」と考えていました。その答えのひとつが抗菌印刷です。抗菌印刷自体、以前からその存在だけは知っていました。
実際、診察カードやカルテ、薬袋などの医療・医薬品分野、書籍・出版の分野では一部、抗菌印刷が使われつつあります。しかし、お菓子も含めた食品分野での活用事例は(私の知る限りは)まだありません。そこに本格的な事業として乗り出せば「必ずいける」と確信したのです。もちろん印刷を柱とする経営の根幹を変えるつもりはありません。経営者として新しい事業の柱を立てることは当然であり、またそうしないと企業としての未来も開きませんから。
- そもそも抗菌印刷とは?
湯浅 簡単に言うと、パッケージやカタログなどの印刷物に透明な抗菌インキを表面コーティングする技術です。日本の大手インクメーカーなどが、十数年前に開発していたものですが、印刷物として「コストが高くつく」などの理由から、なかなか普及が進まずにいて半ば「眠ったまま」の状態でした。
- どれだけの効果があるのでしょう。
湯浅 経済産業省の傘下に抗菌製品技術協議会(SIAA)という検査機関があります。ここが抗菌印刷の抗菌性や安全性を厳正な試験を通して評価します。それによると当社使用の抗菌インキを使った抗菌試験では、黄色ぶどう球菌と大腸菌がともに1万4125菌数あったのが、24時間後にはわずか0.6菌数へと激減します。パーセンテージでいうと約99%の抑制です。特に大腸菌の場合、何もしないと菌数が107万を超えて逆に増えてしまいます。もの凄い効果です。
- SIAAからの認証は?
湯浅 ただいま申請中で、まもなく正式認可がおりる見込みです。
- 今後の意気込みをお聞かせください。
湯浅 私自身、お菓子が大好きです。その菓子業界に安心と安全に役立つ抗菌印刷の活用を提案する「一番手」として、そのアドバンテージを活かしたいですね。私が期待しているのは、それぞれがお住まいの地元で「高級イメージ」として愛され続けている老舗の和・洋菓子店です。包装紙にさりげなく小さな文字で「抗菌印刷」とでも書かれていたら、買われたお客さまも「さすが」と喜ぶでしょう。
このように使う人に配慮した抗菌印刷は、特にコロナ禍のいま、安全性とブランド力の向上につながるものと思います。この紙面をお借りして、ぜひご検討していただければ嬉しいですね。
▲抗菌マスクホルダー
■弘文社プロフィール
1947年(昭和22年)、職業軍人(海軍)だった湯浅社長の父、正春氏が創業。実直勤勉な人柄と仕事ぶりで信頼を得て、地元市川市の広報紙を長年にわたり印刷し続けている。設備投資も積極的で常に最新式の印刷機械を導入、高い技術と提案力で顧客の要求に「真面目に向き合い問題解決する印刷会社」だ。抗菌印刷への問い合わせや相談は電話047-324-5977。担当は大畑勝・業務企画室長。