平塚製菓の香取新工場 いよいよ9月本格稼働へ

原点復帰がネクストステージだ!

自社ブランドメーカーへの脱皮 「ここはその夢の城」

 チョコレートに特化した「OEM企業」として平塚製菓は、これまで幅広いニーズに対応する技術力で高い評価を受けてきた。また提案型の商品開発力は業界でも定評がある。その平塚製菓がいま大きな変貌を遂げようとしている。昨年末、業界人を「アッ!」といわせた『TOKYO CACAO』は、そのプレリュードといえよう。小笠原の母島で、土作りから始まる10年をかけたプロジェクト「東京ブランド」を確立した。そして、この6月。創業120周年記念事業として「香取新工場」(千葉県香取市)を竣工。9月の本格稼働に向け急ピッチで調整を進める「新工場」から見えてくる新たなステージに迫る。

【平塚製菓・香取工場概要】

 2021年創業120周年の記念事業として、草加西工場の老朽化のための代替え

工場という役割を担うべく建設。地元・香取市民の雇用や地元企業との取引など香取市からの期待も高い。安心安全のための最新工場として2021年にISO22000の取得を準備中。さらにその後のFSSC22000取得も視野に入れる。またさらなる品質向上と生産性の向上のため、すべての生産設備は内外から新規に調達した。生産能力は4年後に年産1970トンと草加工場と肩を並べる予定。

① 工場稼働:2020年9月1日(予定)

② 敷地面積:26541平方メートル

③ 建物概要:鉄骨平屋建て、延べ床面積4823平方メートル 

④ 生産品目:4ラインで各種チョコレート、レボリング、ウェハースなどを生産予定

⑤ 施設設備:搬出入口エアシャワー、顔認証システム、X線検査機、ウェイトチェッカーほか

⑥ 検査保証:菌検査、保存検査、食味検査、品質規格書作成、各種検査対応ほか

⑦ 教育制度:一般衛生教育、異物混入対策教育、CCP教育、OPRP教育など


新工場のねらいとは

 香取工場は市内近郊ののどかに広がる田園地帯の一角にある。概要は別表どおりだが、とにかく広い。敷地面積は2万6541平方メートル。ダブルスのテニスコートを優に100面もとれる。白い建屋がまぶしく光る。この広大な土地は、さまざまな工程を要するチョコレート工場にふさわしい舞台だ。

 新工場は同社創業120周年を記念した事業の一環ではあるが、草加西工場の老朽化による代替工場という側面もある。同工場は三代目・平塚正幸社長の父、平塚馨氏が昭和36年に建設したゆかりの深いもの。その意味で新工場は平塚製菓の新たな未来を築く城の役割を担う…

【続きは5470号20頁へ】


奇跡が生んだ新天地・香取への進出…  念願の自社流通ブランドの立ち上げへ

平塚正幸社長~ ネクストステージを語る

写真左、平塚正幸社長。新工場は地元・香取市の期待も大きい。工場完成を祝いに宇井成一市長(右)も駆けつけた。

飛び込んできた誘致話

 

 ――待望の香取新工場がこの6月に竣工し、9月の稼働に向けて、いよいよカウントダウンとなりました。社長に就任されてから二つめの工場ですね。メーカーにとって工場は「城」と譬えられますが、二つというのはなかなかあることではありません。思い残すことはないのでは?(笑)。

 平塚 そんなことはなくて、むしろ「これからだぞ!」との思いですよ。2011年に当社の創業百十年を記念して帝国ホテルで祝賀会を開き、記念事業として草加西工場が2013年に竣工したわけですが、その竣工式の席で、私はまたもや、ご来賓や関係者が大勢集まる前で宣言をしたのです。それは「もう一つ、新しい工場を建てるぞ」とね。それがこの香取の新工場です。

 先代から事業を引き継いだのが1990年。以来、私は「平塚製菓という企業のあり方」を真剣に見つめてきました。そして出した結論が業態の変更です。それまでの平塚製菓はチョコレートをはじめ、焼き菓子やウエハース、キャンデーなどを手広く製造し、販路も多く抱えていました。バレンタインなどの催事にも力を入れてきたのですが「このままでは平塚の未来はない」と考え、それまでのすべての事業をいったん白紙に戻したのです。

 ――OEMメーカーへの大転換でした。

 平塚 運も味方したのだと思います。また時流にもうまく乗ることができたのでしょう。何とか売上を伸ばして、新しいステージの中でも成長することができたのです。多くの支えがあればこその感謝の思いです。話しを戻しますと、2013年の草加工場の竣工式の宣言からこの香取工場は生まれたといえます。じつはその時、別の2つを宣言しています。いずれも2021年の創業120年に向けて「己を奮起させる」意味を込めたものでした。

 一つめは、平塚製菓が健全経営によりしっかりと生き延び続けること。もう一つは新しいお菓子のビジネスをスタートさせること。これは昨秋に『TOKYO CACAO』という新しいブランドを立ち上げることで実りました。その二つはまだ良いとしても、三つめが問題です。じつは「新しい工場建設宣言」は内心「しまった!」と思ったんです。というのも、よくよく冷静に考えれば、新工場を建てようにも、まず希望どおりの土地が見つからないことは明瞭でした。

 本音として「新工場を持ちたい」という夢はたしかに持っていました。チョコレート工場にふさわしい土地とは何か。それは100mを超す長さのストレートラインを敷設できる土地です。また広くて長ければ、平屋の工場棟で済みます。平屋なら草加工場のように、いちいち1階と2階を行き来しなくても良いので効率的です。とはいえ、そのような理想の土地は草加市近郊にはないし、そもそもそこに投資するだけの潤沢な資金があるわけもなかったのです。

 メーカーの人間の考え方の常として、設備にお金をかけることに対してはそれほど躊躇しませんが、工場や土地にお金をかけることには二の足を踏むところがあります。だから「これだけは無理かな」と後悔に近い思いを抱いていました。

 

8000坪を無償で!

 

 ところが、そんな矢先に千葉銀行さんから、香取市小見川というところに、旧ソニーEMCS工場の跡地があり、その土地を「購入しませんか」というお話しをいただきました。その他の銀行からもお話しはありましたが、千葉銀さんの話しがいちばん魅力的に映ったし、熱心にエントリーを勧めてくれたのです。しかも驚いたことに8000坪のその土地が無償で入手できるというのです。とても魅力的なお話しでした。正式には「小見川産業用地事業予定者募集」というもので、いわゆる公募型プロポーザル(事業提案方式)です。

 そこで私は学識経験者などを前に「平塚製菓がいかに可能性を秘めたいかに素晴らしい企業であるか」を力説しました。「進出の暁には地元の振興に大いに役立つ」とも申し上げた。その熱意が通じたのかどうかは分かりませんが、結果として正式に進出が決まったのです…

【続きは5470号22頁へ】

奇跡と呼ばれた「東京産カカオ」の栽培。夢を叶えた小笠原・折田農園経営者の折田一夫氏(右)とともに。


土壌から創るこだわりチョコレート リモートギフトに最適

ここにしかない! メイドイン東京のチョコレート発売

 

 平塚製菓が「史上初の東京産のチョコレート作り」をめざして、東京の母島(小笠原村)で2003年から取り組んできたカカオの栽培計画「東京カカオプロジェクト」。それは昨年『TOKYO CACAO』という果実(商品)となって見事に開花させた。大きな話題を呼んだ昨年に続いて、平塚製菓は今年も『TOKYO CACAO』の発売を開始した。商品名は『TOKYO CACAO 2020』。カカオ含有率70%のタブレットチョコレートが2枚入っている。価格は税別2500円(46g)。

 「東京産カカオ」は収穫したばかりの新鮮な生カカオをすぐに発酵と乾燥をさせて作るので、力強い果実の香りとマイルドな風味が特徴だ。今年はカカオの収穫量が増えたことで、価格は昨年よりもお求めやすい設定となっている。しかも昨年よりもフルーティさが増しており「今年ならではの味」(同社)という。新型コロナの影響で今年の夏はお盆でも故郷へ帰れない人が多かった。大切な人に会えない…。『TOKYO CACAO』は「気持ちを贈る」リモートギフトにも最適だ。

 今年はもう一つ、新しい仲間が加わった。それが『TOKYO CACAO シュクレ・ニブ』だ。シュクレ・ニブとは、ローストしたカカオニブに砂糖をコーティングしたもの。砂糖はミネラルが豊富なきび砂糖を使用。シュクレ・ニブのために深焙煎で仕上げたカカオニブは、チョコレートと同じ配合ながら、チョコレートとはまったく違うテイストが味わえる。

 香ばしくてカリッとした食感はブランデーやウイスキーなどの洋酒のお供にピッタリだ。またアイスクリームなど乳製品のトッピングにも良い。

 土づくりからカカオ栽培に取り組む「東京産カカオ」だからこそできる本格的なカカオ菓子。カカオ本来の味が楽しめる。価格は税別1000円(50g)。

 両商品ともにすでに8月7日より同社の公式オンラインストアで予約販売受付を開始。11月1日より順次発送の予定だ。

宝物のような缶入りの丁寧なパッケージは

贈り物に最適

和の伝統柄をモチーフにした上質なデザイン


新登場の『シュクレ・ニブ』

採れたて新鮮なカカオ