新宿中村屋『黒かりんとう』の1世紀 庶民の味へと普及


 日本を代表する伝統菓子のかりんとう。起源は古く、諸説あるものの、わが国では遣唐使由来の油揚げ菓子がそのルーツだと言われている。しかし当時は平安時代の貴族階級の人々のみが嗜む貴重なお菓子で「幻の味」であった。一般に広まるのは江戸時代になってから。明治、大正を経て昭和になり、いよいよ庶民の味として定着。そんなかりんとうの普及に大きく貢献したのが新宿中村屋(中村屋)。その『黒かりんとう』が昨年、販売開始から100年を迎えた。

 中村屋がかりんとうを売り出したのは1919年(大正8年)。当時としては珍しい袋詰めの形態で店頭に陳列。その頃のかりんとうは堅くて油っこい商品がほとんどだったが、中村屋は最高の原材料を用いることで改良。職人たちの熱心な創意工夫と確かな腕ともあいまって、口当たりの柔らかいサクッとした食感に仕上げた。都会的で洗練されたデザインの袋詰めも受けた...

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