【シリーズ 継往開来】 堂本製菓株式会社 代表取締役 堂本典希 氏 その①

 先人の事業を受け継いでそれを発展させながら未来をどう切り開くのか…。「シリーズ継往開来」の第2弾は1909年(明治42年)に創業、川崎を代表する煎餅老舗の堂本製菓(神奈川県川崎市)。その発展の軌跡を辿りながら、四代目の堂本典希社長と、その跡を継ぐ息子の副社長・正也氏による「物語」を紹介する(3回連載)。

人に支えられ感謝の111年

 

 人を大事にするのは堂本製菓の心意気!

 

 本紙 手作り感たっぷりの高級米菓として知られる『大師巻』。その美味しさは、一年待たないと手に入らない「幻のお煎餅」とされるほど有名です。その堂本製菓さんは昨年創業110年を迎えられました。その堂本家のルーツはもともと福井県の武生、いまの越前市だそうですね。

 堂本典希社長(以下、社長) 堂本家は武生の地で約二百年続く家柄でした。創業者である曽祖父の初代・六左衛門が、訳あって奉公に出ることになり上京、煎餅づくりを学びました。やがて独立し、いまの東京・墨田区本所で米菓の製造販売を始めました。それが堂本製菓(当時は堂本商店)の創業です。その1年後に東京などで大きな水害に遭ったことで、当時の八王子町、いまの八王子市八日町甲州街道沿いに店を移しました。

 ――1929年(昭和4年)にいまの川崎に移られます。

 社長 川崎に移ったのには理由があります。年号が昭和に代わってからまもなくのこと。祖父の三郎(二代目六左衛門)の兄・敏雄が家を出てしまって、そのまま行方知れずになってしまったのです。兄のことを心の底から慕っていた祖父は、あちこちを探し回りましたが、結局分からずじまい。しかし、やがて敏雄がいまの都内大田区六郷あたりに住んでいることが分かると、曽祖父をはじめとする一族を説得して、八王子から新天地を川崎にすることを決めたのです。以来、三郎は兄のもとへ毎日のように自転車で通ったそうです…

【続きは5455号8面へ】

 

写真・予約しても1年待ち。幻の煎餅『大師巻』

■プロフィール

堂本典希(どうもと・のりき)

1955年(昭和30年)川崎市で生まれる。麹町学園高校から聖徳女子短大へ。81年より家業に。三代目社長、父・清一さんの葬儀では僧侶不在のアクシデントの中、自ら読経供養したことは伝説エピソード。1月に改名して「典希」と名乗る。