【TOP interview】 株式会社龍角散 代表取締役社長 藤井隆太 氏

グローバル戦略について語る①

 のどの専門メーカーとして、200年以上に亘って「日本ののど」を守り続けてきた龍角散。志の輔師匠の「ゴホン! といえば、ロンチャオサン!」のTVCMが日本でオンエアされ、話題となった。そして昨年8月、中国のOTC医薬品トップメーカーである華潤三九(カジュンサンキュウ)とパートナーシップの締結を発表した。実は同社には、50年以上も前から台湾や韓国、香港、米国などへ製品を輸出してきた歴史がある。藤井隆太代表取締役社長に、龍角散のグローバル戦略について聞いた。(全4回)

日本の龍角散から世界のRYUKAKUSANへ

 中国の華潤三九と提携を発表

 

 今回の発表では、華潤三九は5年後までに呼吸器器官関連製品カテゴリーの売上80億元(約1200億円)を目指している。中国市場で販売される『龍角散ののどすっきり飴』『龍角散ダイレクト』などは、その目標達成のためのキーとされている。

 実は、20年ほど前にも中国へ輸出する話があった。だが、「中国の医薬品に関する法律が不透明で、医薬品承認のプロセスが分からなかった。そこで輸出は出来ないと言ったら、製品のノウハウや技術を全て教えて欲しい、中国に工場を作って欲しいと言われた。それでは“メイド・イン・チャイナ”になってしまう」と藤井社長。

 そうした経緯があって、中国との交渉は断念。その代わり、“メイド・イン・ジャパン”の製品を買いに来てもらう戦略を打ち出した。“インバウンド”という言葉が浸透する、ずっと前の話だ。

 「業界では当社が一番早かったと思う。最初はさっぱり分からなくて、ボチボチ売れているという程度だった」。

 だが、中国人へのビザ発給要件が2010年に緩和されてから、一気に売上が伸びた。これは、「グローバル化で世の中がドンドン変わる」と見越した藤井社長の先見の明であった。

 一度は頓挫した中国進出が、なぜ昨年から実現に向かっているのだろうか。

 「中国側から当社の製品を売りたいと言ってきた。月日が経てば、状況も変わる。“メイド・イン・チャイナ”を売るよりも、クオリティーの高い“メイド・イン・ジャパン”を輸入して売った方が、成功の近道と考えたようだ」…

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■プロフィール

藤井隆太(ふじい りゅうた)

 1959年11月9日 東京都生まれ。1984年 桐朋学園大学音楽学部研究科修了後、大手製薬メーカーに入社。三菱化成工業(現・三菱ケミカル)を経て、1994年龍角散入社、1995年代表取締役社長に就任。

 世界で初めて開発した服薬補助ゼリー『らくらく服薬ゼリー』、『おくすり飲めたね』のヒット、基幹商品『龍角散』の姉妹品『龍角散ダイレクト』の投入などで累積赤字を一掃。売上を就任時の5倍まで伸ばす。また、東京都家庭薬工業協同組合副理事長、日本家庭薬協会副会長を歴任するなど、業界の発展に尽力しながら、フルート奏者としてコンサートへの出演や後進の指導にもあたっている。