「新・製品開発」のコンセプト 尾西食品 <前編>

「美味しくて安心」で市場を牽引

写真・アレルギー物質(特定原材料等)27品目不使用の『尾西のライスクッキー』

 震災や台風、最近ではゲリラ豪雨のように、毎年多くの自然災害に見舞われ続ける日本。窮屈な避難所生活を余儀なくされる被災者にとって最大の懸念は衛生管理と健康維持だが、命綱であるはずの非常食は、これまで「味気ない・冷めたい・食べづらい」とされてきた。しかしいま、その常識は尾西食品によって大きく覆されようとしている。同社はアレルギー対応食品分野におけるパイオニア企業。その技術とノウハウは「Better For Youの食品業」をめざす親会社・亀田製菓にとっても戦略的な価値をもつ。市川伸介常務取締役に話をきいた。

アルファ米にかけた創業者の思いとは

 

 本紙 会社案内の表紙が潜水艦をイメージしたものになっていますね。

 市川 当社の創業者である尾西敏保はもともと旧海軍で潜水艦の乗組員をしていました。その体験を生かし、潜水艦の中の酸素量を減らすことなく、あるいはジャングルで火を使わずに煙の上がらない軍用食糧の研究に大阪大学の二国二郎博士と共同で取り組み、1944年(昭和19年)にアルファ米を初めて工業化することに成功したのです。

 戦後は平和利用への転換として、戦後の食糧難を「何とかしたい」との思いで弊社を49年に設立し、水を加えるだけで美味しく食べられる加工食品を開発したのです。それが現在のアルファ米の原点です。以来、弊社は「食に関する危機管理に対応する企業」を看板にアルファ米を軸とした事業を展開してきましたが、非常食に対する関心や社会的な位置づけがいまのように高くない時代が続いたこともあり、企業として大きく成長することもなく、安定経営の時代が長く続きました。

写真上・昔の『オニシライス』

【続きは5450号8面へ】