世界へ“日本の食品”を! 海外販路の拡大に取り組むお菓子・食品メーカー

 国内では、少子高齢化と人口減少の進行による市場縮小が予想されている。そのため、お菓子・食品業界で輸出の機運が高まっている。今回は、海外輸出に取り組むお菓子・食品メーカーを「〝日本の食品〟輸出EXPO」出展社の中からピックアップして紹介する。

2019夏季特大号より】

“日本の食品”輸出EXPOの会場は毎年、盛況!

製餡からの挑戦

 製餡・練餡の製造販売を主とする遠藤製餡(都内豊島区、遠藤眞一社長)は1950(昭和25)年の創業以来、伝統技術に磨きをかけつつ、時代のトレンドを捉えてきた。1970(昭和45)年「缶詰/水ようかん」、1986(昭和61)年「低糖度餡」、2001(平成13)年「あずき茶」、そして2009(平成21)年「ゼロカロリー和菓子」の製造・販売を開始。「常にお客様の幸せや愉しみに繋がる商品を作りたい」という思いがある。

 輸出に注力し始めたのは約3年前から。メインは業務用品(原料餡)と市販品(カップ餡・和菓子・ゼロカロリー製品・小豆茶等)である。2018(平成30)年には第2回「“日本の食品”輸出EXPO」に出展し、和菓子の素材に欠かせない餡の魅力を海外バイヤーに紹介した。

 「輸出の販路を広げたいので、バイヤーが多く集まる見本市を選んで出展しています。国内だけでなく、インド、アメリカ、香港等の見本市にも出展してきました」(営業本部営業企画開発グループ・遠藤海周部長)。

 現在、輸出で伸びているのは植物プロテインだと遠藤部長は話す。特に好調なのは、ノンアレルギー、非遺伝子組換え、オーガニック等をキーワードにしたエンドウ豆を原料とするものだという。

 「小豆を原料とする製品も鋭意開発中です。老舗が多い製餡業界の中で当社は後発なので、製品開発では伝統技術と最新ニーズのクロスを常に意識しています。世界のお客様から喜ばれる企業でありたいですね」(遠藤部長)。


「Tarami」への道

 フルーツゼリーのパイオニアであるたらみ(長崎市、和田 富社長)は、1950(昭和25)年に「多良見青果」としてスタートした。以来、フルーツと共に歩み続け、「世界中から取り寄せたフルーツを更に美味しく引き立てる製品開発」を行ってきた。

 製品輸出は、約20年前から卸を通じて香港に行ってきたが、4年前に営業本部内に海外営業部を設置して本腰を入れるように。同部署の小川宏志部長(営業本部長・量販営業部長兼海外営業部長)は、「国内シェア52%の当社にとって海外は魅力的な市場です。現在、アジアを中心に販路拡大に取り組んでいるところです」と話す。

 2017(平成29)年の第1回から海外バイヤーと直接商談できる「“日本の食品”輸出EXPO」に出展し続けている。取引先は、アジア、南米、欧州の各国に広がっており、売上の約9割はアジアが占める。

 「海外でも『どっさりゼリー』シリーズが人気です。また、パウチゼリーも好調。国内では売上の10%に止まるのですが、海外では40%に達します。簡便・時短需要が国内よりも高いですね」(小川部長)

 同社の輸出製品の特徴は「海外用パッケージがない」こと。一部ラベル対応しているが、国内と同じ製品を海外でも販売している。今のところ、競合はほとんどない。「10か月以上の賞味期限」と「禁止成分不使用」が他社製品にない優位性を生んでいる。「Tarami」をインターナショナルブランドにしたい、と小川部長は意気込む。


イカ・海苔に商機

 スルメフライを主体に海産珍味とスナック類を製造販売するまるか食品(広島県尾道市、川原一展社長)は、20年以上前から国内商社を経由した輸出を行ってきた。短・中期を見据え徐々に拡大し、売上の一つの柱に成長させていく事業と位置付けている。

 輸出促進を本格的に進めていた2018(平成30)年、「“日本の食品”輸出EXPO」に出展した。

 「ブースでは、人気のある『瀬戸内シリーズ』を海外の方に食べてもらうことに力を入れました。基本的には、禁止成分以外は仕様を変えず、味・パッケージとも国内と同様のスタイルで提案しました」(営業部企画課・松枝修平課長)。

 出展にあたっては、海外の言語に対応できる取引先に協力してもらい、その場で商談できる体制を強化した。イカ天・のり天等の “日本ならではの食品”を海外バイヤーに紹介した結果、高い評価を得た。「海外提案に自信が持てました」と松枝課長は振り返る。

 最近、『イカ天瀬戸内れもん味』が国内で大ヒット、累計出荷1500万袋を超えた。20代後半の女性をターゲットに開発したアイテムで、ひと口サイズのイカ天に瀬戸内産のレモンパウダーをまぶした。イカ天のサイズを小型に改良し、パッケージデザインも一新した。

 「そのヒットに伴い海外からの引き合いが拡大しています。アジア諸国ではイカ・海苔を食べる文化があるので、成長が見込めます」と松枝課長。海苔も欧米で消費が拡大し認知が上がっており、期待が持てるという。


輸出ビッグウエーブ

 農林水産省が2018(平成30)年に公表した「食品産業戦略 食品産業の2020年代ビジョン」では、「海外市場の開拓」は戦略の柱に位置付けられている。

 「日本市場で育てられた商品を海外に売り込む、さらに、日本向け商品を土台に現地市場の好みに応じて調整して提供することで海外市場、とりわけアジアで急増する新たな富裕層をターゲットにした市場を開拓できる。輸出により、日本で生産・製造されることの魅力が増せば、世界に向けて食品を送り出すだけでなく、日本のマザー工場やモデル店舗で培った技術を海外に展開することも可能になる」。

 政府目標は、「2019年に農林水産物・食品の輸出額1兆円」である。

 今年6月に開催された全日本菓子協会第34回通常総会&懇親会では、川村和夫会長(=明治ホールディングス社長)は次のように述べた。

 「国内需要は横ばいだが、輸出やインバウンド等の需要が伸びている。それらをしっかり捉えたい。輸出市場では、諸外国との 競争が待っている。“安心・安全”と“新しい価値の創造”を更に強化することで、競争に勝ち抜ける業界にしたい」。

 毎年秋に「“日本の食品”輸出EXPO」を主催するリードエグジビションジャパンの調査によれば、海外バイヤーが輸入したい商材のトップ3は、①お菓子②加工食品③飲料・酒だった。

 日本のお菓子・加工食品業界の輸出ビッグウエーブは、存外すぐそこまで迫っているのかもしれない。

“日本の食品”輸出EXPOの会場は毎年、盛況!